紅玉こうぎょく)” の例文
ひだのある桃色の裳袴もばかまには銀モールの縁繍ふちぬいが取ってあり、耳環みみわ翡翠ひすいはともかく、首飾りの紅玉こうぎょくやら金腕環きんうでわなど、どこか中央亜細亜アジアの輸入風俗の香がつよい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此のたびの不思議な其の大輪たいりんの虹のうてな紅玉こうぎょくしべに咲いた花にも、俺たちが、何と、手を着けるか。雛芥子ひなげしが散つてに成るまで、風が誘ふをながめて居るのだ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
朝日が明るくあたっていて、葉を落としつくして果実ばかり残した柿の、紅玉こうぎょくのような肌を輝かせていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どこひとつ角ばったところのないなだらかな身体の曲線は、縦横にうねりまじわり、ぷっとふくらんだ二つの乳房のさきにある薄桃いろの乳首が、紅玉こうぎょくをちりばめたようにみえます。
人魚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
小づくりな、色の白い弁信の姿が、この時は紅玉こうぎょくのように赤く見えました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
透かすと……鍵屋の其のさびしい軒下のきしたに、赤いものが並んで見えた。見る内に、霧が薄らいで、其がしずくに成るのか、赤いものはつやを帯びて、濡色ぬれいろに立つたのは、紅玉こうぎょくの如き柿の実を売るさうな。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雛の前では紅玉こうぎょくである、緑珠りょくしゅである、みな敷妙しきたえたまである。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)