米栂こめつが)” の例文
針葉樹の大深林が見られるのも、主として沼の北岸で、大白檜おおしらびそ、黒檜、米栂こめつが、姫小松、唐松などが、或は混生し、或は純林をなして鬱蒼と繁茂している。
白檜しらべ唐櫓とうひ黒檜くろべ落葉松からまつなどで、稀にさわら米栂こめつがを交え、白樺や、山榛やまはんの木や、わけてはやなぎの淡々しく柔らかい、緑の葉が、裏を銀地に白く、ひらひらと谷風にそよがして
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
金峰山のぶな米栂こめつがの美林、今ではもう昔の面影をしのぶたよりさえない川端下かわはげや梓山の戦場ヶ原の唐松林、十文字峠途上の昼お暗い針葉闊葉の見事な林、皆其中を歩いたばかりでなく
秩父のおもいで (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
三人には勿体ない位の広さだ。そして私の為には、特に米栂こめつがの細い枝先を五寸余りも積み重ねて、其上に天幕を敷き、さあ旦那の座敷が出来たにと、懐手して感心している私を招じ入れる。
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頂上から二十分ばかり黒木の中を北に進むと、尾根が痩せて大きな岩が露出し、木は拗けて丈がひくくなり、黒檜、米栂こめつが米躑躅こめつつじなどが多い。大菩薩連嶺中で最も異彩を放っている場所である。
初旅の大菩薩連嶺 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
岩頭に立って甲州側を瞰下みおろすと、足早に駆け下りて行く霧の絶間から大きな岩が幾つかあらわれたり消えたりして、米栂こめつがなどの灌木状の針葉樹が岩の肌にべっとりと緑をなすり付けているのが
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
米栂こめつがなどの針葉樹が混って来ると、岩ウチワの薄桃色の上品な花が見られるようになる。曙躑躅あけぼのつつじ石楠しゃくなげ色鮮いろあざやかな紅花があやに咲き乱れているのもこのあたりである。谷の空では時鳥ほととぎすが頻りに鳴く。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
米栂こめつが、黒檜、白檜などが多少の偃松も交って、石楠しゃくなげ岳樺だけかんばなどの闊葉樹と共に、矮い灌木状をなして巨岩の上に密生しているさまは、磊砢らいらたる嶄巌ざんがんを錯峙させている南側よりも寧ろ私は好きである。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
甚しい場所では更に黒檜や米栂こめつが偃松はえまつをさえ交えている。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)