竹縁ちくえん)” の例文
俊寛様は楽しそうに、晩の御飯をおしまいになると、今度は涼しい竹縁ちくえんの近くへ、円座わろうだを御移しになりながら
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あくる朝は美しく晴れて、大海のようにひろくあおい空の下に、柿のこずえが高く突き出していた。その紅い実をうかがって来る鴉のむれを、藻は竹縁ちくえんに出て追っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
芭蕉亭ばしょうてい竹縁ちくえんに腰かけていた居士こじの目が、ジロリと光る、その手に持っている手紙をみた竹童ちくどうは、ふいとさっきの用を思いだして、うわばみとわしの話ができなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼のふち清々すがすがしく、涼しきかおりつよく薫ると心着く、身は柔かき蒲団ふとんの上にしたり。やや枕をもたげて見る、竹縁ちくえんの障子あけ放して、庭つづきに向いなる山懐やまふところに、緑の草の、ぬれ色青く生茂おいしげりつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御部屋は竹縁ちくえんをめぐらせた、僧庵そうあんとも云いたいこしらえです。縁先に垂れたすだれの外には、前栽せんざいたかむらがあるのですが、椿つばきの油を燃やした光も、さすがにそこまでは届きません。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
藁ぶき屋根、竹縁ちくえんの二重家體にて、上のかた佛壇、その下に押入れあり。つゞいて破れたる障子、破れたる壁。上のかたの竹窓の外は蓮池にて、庭より奧へかけて一面に紅白の蓮の花さけり。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
眼のふち清々すがすがしく、涼しきかおりつよく薫ると心着こころづく、身はやわらかき蒲団ふとんの上に臥したり。やや枕をもたげて見る、竹縁ちくえん障子しようじあけはなして、庭つづきに向ひなる山懐やまふところに、緑の草の、ぬれ色青く生茂おいしげりつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)