穿ほじ)” の例文
有松氏の顔は名代の痘痕面あばたづらなので、その窪みに入り込んだ砂利は、おいそれととりばや穿ほじくり出す事が出来なかつたのだ。
「そら仕樣がおまへんがな。字を覺えてかしこなるんやもん。」と、重吉は鉈豆の煙管の詰まつたのを穿ほじりながら言つた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「それを掘り当てようため、十人の雛妓が懸命に穿ほじる箸の尖で、あの結構なお庭が一とき菊石面あばたづらになったわけ」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あか摘取つみとると、すぐそれがけがれてしまひ、ちよいと草木くさき穿ほじつても、このくとしぼんでゆく。
探偵のくせに、そんなことばかり穿ほじくって何になる。犯人の目星はちゃんと、ついてるじゃないか! と言わんばかりの苛立いらだたしさを、露骨に頬に現している。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
あんた方は兎角とかくつまらない事を穿ほじくり出しては人を嫌がらせる癖がありますね。ええ、私はドルガンは虫が好かなかったのです。何う云う訳か気が合わないでね。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
喜「ン畜生変な物を飲ましやアがって、横ッぱらえぐるように、鳩尾骨みぞおち穿ほじるような、ウヽ、あゝ痛え」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この癖は非常に執拗で、だから「トントン」のいつも立っている窓の下の畳の一部は、トントンとやる度毎の足裏の摩擦でガサガサに逆毛さかげ立ち、薬研やげんのように穿ほじくれていた。
三狂人 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
更に土瓶の下を穿ほじくり、蚊いぶし火鉢に火を取分けて三尺の椽に持出し、拾ひ集めの杉の葉を被せてふう/\と吹立れば、ふす/\と烟たちのぼりて軒場にのがれる蚊の聲凄まじゝ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蚯蚓みゝずが風邪の妙薬だといひ出してから、彼方此方あちらこちらの垣根や塀外へいそと穿ほじくり荒すのを職業しやうばいにする人達が出来て来た。
しつこく私が穿ほじくり立てたのに対して、初めは幾分羞恥と躊躇ちゅうちょの色を見せていたが、そのうちあきらめたのか苦笑しつつ、到頭詳しく話してくれたところを、今私が順序立てて
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
齒を穿ほじつてゐた爪楊子を襟に差しつゝ言つた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そればかりか、子規は俳句か何かを考へる時には、よく指先で鼻のあなから鼻糞を穿ほじくり出したものだ。
なんという名前であるか? ということなぞを穿ほじくりたいと思っていたのであろうが、武器を帯びない住民をらっして来たのであったから、別段手荒なことなぞをして連れて来たわけではなかった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
園芸服のキチン氏は、せつせと土を穿ほじくりながら答へた。