矗立しゅくりつ)” の例文
その花には届くが、低いのでも階子はしごか、しかるべき壇がなくては、扉には触れられない。辰さんが、矗立しゅくりつして、いわの根を踏んで、背のびをした。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
唯、岩屋の中に矗立しゅくりつした、立ち枯れの木に過ぎなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
まさにこのときともかたあらわれたる船長せんちょうは、矗立しゅくりつして水先を打瞶うちまもりぬ。俄然がぜん汽笛の声は死黙しもくつんざきてとどろけり。万事休す! と乗客は割るるがごとくに響動どよめきぬ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)