ぼう)” の例文
そして、聖天堂しょうでんどうのわきから中腹近くまで登って行った。ここからは淀も、円明寺川の一線も、敵の布陣も、一ぼうのうちだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更にすすめば大別山だいべつざんの高峰眼下にあり、ふもとには水漫々の月湖ひろがり、更に北方には漢水蜿蜒えんえんと天際に流れ、東洋のヴェニス一ぼうの中に収り
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ここの丘から見ていると、十町も先の森まで、一ぼうに街道は見渡されるが、それらしい人影はいつまでも見出せない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふウむ。霊域れいいきの広さは、なかなか一ぼうには出来んのだな。またと、かかる山へ参ることもあるまい。ひとつ明朝は、ここの全堂閣を、遊覧させてもらおうぞ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
報告だけでは、まだうかつに行動できないとするもののように、彼はその目で、曠野を一ぼうに見た。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この実状は、この城の高櫓にのぼって、城下を一ぼうにながめれば歴然とわかる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひるならばいうまでもなく、甲州盆地こうしゅうぼんちはそこから一ぼうのうちに見わたされて、おびのごとき笛吹川ふえふきがわ、とおい信濃境しなのざかいの山、すぐ目の下には城下じょうかの町や辻々つじつじの人どおりまでが、まめつぶのごとく見えるであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)