目庇まびさし)” の例文
黒の洋服で雪のような胸、手首、勿論靴で、どういう好みか目庇まびさしのつッと出た、鉄道の局員がかぶるようなかたなのを、前さがりに頂いた。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
テナルディエは右手を額の所まで上げて目庇まびさしを作り、それから目をまたたきながら眉根まゆねを寄せたが、それは口を軽くとがらしたのとともに
それかあらぬか、翁は天宙から頭上へ目庇まびさしのように覆い冠って来る塩尻の形の巨きな影を認めたかに感じた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
武者たちはみな、白の鎧下を着、かぶと目庇まびさしから、白い布を垂れている。兵庫の手記にあったとおりの、異様な姿で、ひと言も口をきかず、身動きもしなかった。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬の尻毛や亜麻のごく柔かい弾力の強いもので、目庇まびさしまでも薄い上等のエナメル皮や何かが使ってある。
ブルターニュ公はかぶとの両角の間に獅子ししの記章をつけ、ブールボン公は兜の目庇まびさしに大きな百合ゆりの記章をつけていた。
皮の目庇まびさしのたれた帽子が、日に焼け風にさらされ汗の流れてる顔の一部を隠していた。
背嚢はいのうを取り、それを開いて中を探り、何かを取り出して寝床の上に置き、靴をポケットにねじ込み、方々を締め直し、背嚢を肩に負い、帽子をかぶり、その目庇まびさしを目の上に深く引きおろし