犯人ほし)” の例文
「その通りさ、こんなに早く犯人ほしが挙がるとは思わなかった。下っ引が二人飛んで行ったから、追っ付けしょっ引いて来るはずさ」
「まちげえならまちげえ、犯人ほしなら犯人と、ふにおちねえことがあるなら、バンバンと締めあげてみりゃらちがあくじゃござんせんか!」
「ハハハハ、まだ合点がいかんのかね。左利き——それが、ギリギリ結着というところだ。早く犯人ほしを挙げて、暮にはたんまりと暖まるさ」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
名古屋の金のしゃちほこにお天道様が光らない日があっても、釘抜藤吉の睨んだ犯人ほしに外れはないという落首が立って
「その五人の樣子を、くはしく話して見るが宜い。神田で八を置いて、高輪の犯人ほしを言ひ當てるのも、洒落れて居るだらう」
いかさま、名からしてそいつが犯人ほしにちげえねえや。じゃ、ちょっくら川下のとち狂っている人足どもにそういってきな。
「見ろ。はっはっは、犯人ほし玄人くろだせ。急場にそこいらさぐったって、これじゃあおいそれたあ出ねえわけだ。」
「あれから丸半日、足を擂粉木すりこぎに飛び廻りましたよ。三河町が變な顏をするから、あつしはあつしで、外から犯人ほしを擧げるつもりだつたんで」
にらんだ犯人ほしなる勘当宗助、はたして一座にいるやいなやと、ずかずか棧敷さじきのほうから小屋の中へはいっていきました。
「なあに、心配しなさんな。」藤吉は、珍しく笑って、「犯人ほしせえ挙げりゃあすぐにも開けてやらあな。」
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あれから丸半日、足を擂粉木すりこぎに飛び廻りましたよ。三河町が変な顔をするから、あっしはあっしで、外から犯人ほしを挙げるつもりだったんで」
犯人ほしの十兵衛に対する疑雲は、依然まだ濃厚でしたから、ちょうどそこのかぶき門があいていたのをさいわい、足音忍ばせてこっそりと内庭の中にはいり込みました。
「誰がって親分、とぼけちゃいけねえ、犯人ほしさあね、辰さ。とんぼの畜生、おいらがお菊坊をばっさりやったに違えねえと、ねえ親分、そくに口を割りやしたろう、え?」
「その五人の様子を、くわしく話して見るが宜い。神田で八卦を置いて、高輪の犯人ほしを言い当てるのも、洒落しゃれているだろう」
紙屑籠を肩にかついでは、その紙屑の一つのように江戸の町々を風に吹かれて歩きながら、ねたを挙げたり犯人ほしを尾けたり、それに毎日のように落し物を拾って来るばかりか
「そうか! 尾州下りと聞いちゃ、犯人ほしゃその両国にちげえねえ。じゃ、例の駕籠だッ」
「八五郎兄哥あにい、念のために言っておくがネ、これだけ証拠の揃った犯人ほしを、平次親分がなぜ挙げなかったんだ。後で縄張がどうのこうのと言わないことだぜ」
まあ、あまり遠くへも草鞋は穿くめえ、三吉、犯人ほしを挙げるのは手前の役徳、あっしゃあこれから海老床さ、へっへ。えれえおやかましゅうごぜえやした。皆さん、御免下せえやし。
「八五郎兄哥あにい、念の爲に言つて置くがネ、これだけ證據の揃つた犯人ほしを、平次親分がなぜ擧げなかつたんだ。後で繩張りが何うのかうのと言はないことだぜ」
お堀の水に松の影が映らない日はあっても、釘抜の親分の白眼にらんだ犯人ほしに外れはないと、江戸の町まちに流行はやりの唄となって、無心の子守女さえお手玉の合の間に口ずさむほどの人気であった。
「なるとも、大なりだよ、字が滅法めつぽふうまいから、掛り合ひの人間の書いたのを一々突き合せりや、半日經たないうちに犯人ほしが擧がるよ。番頭さん、ちよいと見せてやらうか」
「親分。」佐平次が沈黙しじまを破った。「この犬あ今夜癇が高えようです。一つ、犯人ほしの跡を尾けさせてみようじゃございませんか。もっとも畜類のこと、当るも当らねえも感次第でやすがね。」
「なるとも、大なりだよ、字が滅法めっぽううまいから、掛り合いの人間の書いたのをいちいち突き合せりゃ、半日経たないうちに犯人ほしが挙がるよ、番頭さん、ちょいと見せてやろうか」
「今し方頭の常公が来て話して行ったが、親分、徳撰じゃえれえ騒動だってえじゃありませんか。知らぬが仏でこちとらあ白河夜船さ、すみません。ま、勘弁してくんねえ。それで犯人ほしは?」
「たとえば、手前が嗅ぎ出した犯人ほしとか、に落ちないと思った事とか——」
殺さなければならないほどの強いつよい悪因縁、これをこめ犯人ほしのこころもち、これにぶつかれば謎はもう半ば以上解けたも同じことである。この人殺しのこころを藤吉は常から五つに分けていた。
たとへば、手前が嗅ぎ出した犯人ほしとか、に落ちないと思つた事とか——」
言うまでもなく犯人ほしはここでお菊を殺して、音のしないようにと水桶に縛りつけて井戸へ下ろしてから、血刀や返り血を洗って行ったものであろうが、そうとすれば少しは物音もしたはずだと思って
「疊をあげるより、犯人ほしを擧げる口がありませんか、親分」
「そのことよ。俺にも見得けんとくが立たねえ。犯人ほしは?」
「畳をあげるより、犯人ほしを挙げる口がありませんか、親分」
犯人ほしは——。」