爐邊ろばた)” の例文
新字:炉辺
そのまへに、曾祖母ひいおばあさんは友伯父ともをぢさんととうさんをそばびましておうち爐邊ろばたでいろ/\なことをつてかせてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それからお八重と二人家へ歸ると、父はもう鉈鎌を研ぎ上げたと見えて、薄暗い爐邊ろばたに一人踏込んで、莨を吹かしてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ベシーの爐邊ろばたの物語の中に、人さらひの手柄話が屡々出て來たので、私は人さらひがゐると信じてゐたから。やつと、車掌が戻つて來た。ふたゝび、私は、馬車に乘せられた。
山家育やまがそだちの石臼いしうす爐邊ろばた夜業よなべをするのがきで、ひゞや『あかぎれ』のれたいとはずにはたらくものゝいお友達ともだちでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
父も母もまだ爐邊ろばたに起きてるので、も少し待つてから持出さうと、お八重は言ひ出したが、お定はと躊躇してから、立つとあかりとりの煤けた櫺子れんじに手をかけると、端の方三本許り
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼が立つてゐたあの敷物もまだ爐邊ろばたに敷いてあつた。
わらんだむしろいてある爐邊ろばたで、數衛かずゑのこしらへてれた味噌汁おみおつけはお茄子なすかはもむかずにれてありました。たゞそれが輪切わぎりにしてありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『何處さげや?』と大工の妻は爐邊ろばたから聲をかけたが、お八重は後も振向かずに
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「他の召使ひも駄目なのでございます。只今はフェアファックス夫人がお會ひになつて出て行くようにと云つてゐらつしやいますけれど、爐邊ろばたの椅子に坐り込んでゐて、此處に參りますお許しがあるまでは動かないと申すのでございます。」
私は夏梨の樹の下に獨りで震へながら、家のものが皆な爐邊ろばたに集つて食事するのを眺めました。
この宿の内儀さんは未だ處女むすめらしいところのある人で、爐邊ろばたで吾儕の爲に海苔を炙つた。下女は油差を見るやうなあかの道具へ湯を入れて出した。こゝの豆腐の露もウマかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)