熔炉ようろ)” の例文
店は熔炉ようろ火口ひぐちを開いたように明るくて、馬鹿馬鹿しくだだっ広い北海道の七間道路が向側むこうがわまではっきりと照らされていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこに堆積たいせきした土塊のようなものはよく見るとみな石炭であった。ため池の岸には子供が二三人りをたれていた。熔炉ようろの屋根には一羽のからすが首を傾けて何かしら考えていた。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すべてを抱擁しなければいけない。われわれの心の熱しきった熔炉ようろの中に、否定する力と肯定する力とを、敵と味方とを、人生のあらゆる金属を、嬉々ききとして投げ入れなければいけない。
それを書いた時の彼自身の感じも、それにたいする老人の生き生きとした感じには及びもつかなかった。彼にとってはそれらの歌は、内部の熔炉ようろからほとばしり出た若干の火花にすぎなかった。