にえ)” の例文
みすみすにえ湯ば呑まして知らん顔をしているのだぞ! (段六が何か言おうとするのに押しかぶせて)うう、百姓は弱え、受身だ
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
お茶番のいる広い土間の入口のくぐり戸をはいってゆくと、平日いつもに増してお茶番の銅壺どうこにえたち、二つの茶釜ちゃがまからは湯気がたってどこもピカピカ光っていた。
あれでできるともできないとも、まだかたのつかない未来を中途半端に仕切ってしまった。そうして好んでにえきらない思いに悩んでいる姿になってしまった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
罪人等四方にうかびゐたるが、バルバリッチヤの近づくにしたがひ、みなまたにえの下にひそめり 二八—三〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
空が曇っているから、海はにえ切らない緑青色ろくしょういろを、どこまでも拡げているが、それと灰色の雲との一つになる所が、窓枠の円形を、さっきから色々なげんに、切って見せている。
Mensura Zoili (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お孝にお前んの身の上はないて、——何が嬉しい、……俺は二階で聞いて胆魂きもたまにえくり返るに、きゃっきゃっきゃっきゃっと笑うて、情事いろごとの免許状ようなものを渡いて帰った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)