煖炉ストオブ)” の例文
旧字:煖爐
かぶつた滿谷は「ゆうべ汲んで置くのを忘れたら、今朝けさ水道が凍つて水が出ない」と云つて水瓶みづがめを手にしたまゝ煖炉ストオブの前に立つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
既にその顔を見了みをはれば、何ばかりのたのしみのあらぬ家庭は、彼をして火無き煖炉ストオブかたはらをらしむるなり。彼の凍えてでざること無し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
奥へ行ったかと思うと、直ぐに出て来て、「洋室は煖炉ストオブいてございませんから、こちらへ」と云って、赤い緒の上草履をそろえて出した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
都会のサロンの煖炉ストオブ……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かぶつて煖炉ストオブの前に膝を並べた時分の姿が目に附いて、嗚呼ああおとなしい間を、と力抜ちからぬけがして了ふ。貴様これが人情だぞ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ゆうべ長谷川君と遅く迄話し込んだので僕は朝寝をして仕舞しまつた。衣替きがへをする間待つて居てれ給へ。」「滿谷は起きてるから。彼処あすこで待つて居よう。むかうには煖炉ストオブも消えてないだらうから。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
宮は楽椅子を夫に勧めて、みづから煖炉ストオブたきぎべたり。今の今まで貫一が事を思窮おもひつめたりし心には、夫なる唯継にかくつかふるも、なかなか道ならぬやうにていさぎよからず覚ゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)