澄透すみとお)” の例文
電車のちりも冬空です……澄透すみとおった空に晃々きらきら太陽が照って、五月頃のうしおが押寄せるかと思う人通りの激しい中を、薄い霧一筋、岸から離れて、さながら、東海道で富士をながめるように、あの
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
低いけれども澄透すみとおった声でほそぼそと聞こえてくるその歌に耳を傾ければ
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
くすぶった、その癖、師走空に澄透すみとおって、蒼白あおじろい陰気なあかりの前を、ちらりちらりと冷たい魂が徜徉さまよう姿で、耄碌頭布もうろくずきんしわから、押立おったてた古服の襟許えりもとから、汚れた襟巻の襞襀ひだの中から、朦朧もうろうあらわれて
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
澄透すみとおる水に映って、ちらちらとゆらめいたが、波を浮いたか、霞を落ちたか、そのおおきさ、やがて扇ばかりな真白まっしろな一羽の胡蝶こちょう、ふわふわと船の上にあらわれて、つかず、離れず、豌豆えんどうの花に舞う。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)