漆掻うるしか)” の例文
そのお蝶の美しさは、漆掻うるしかき達に少なからぬ驚異だったとみえて、彼等は最前から、鳴りをしずめてマジマジと気をとられていましたが、そのうちに
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西へ向いているのか東へさしているのか、この辺の地理になると漆掻うるしかきででもなければ、少しも見当がつきません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漆掻うるしかきはスタスタと桟橋かけはしを渡ってゆく。その揺れる橋を渡るのが、お蝶には面白そうで、秦野屋には用心がありそうで、雲霧と新助には不安そうです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その彼とも見えぬが、手も顔も黒くした“漆掻うるしかき”の男が、まだ夜も明けぬうち、大原から鞍馬への間道を急いでいたが、思うに、それが森掃部であったかもしれない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漆掻うるしかきに身をやつした森掃部が、門の衛士えじ誰何すいかされつつ、しいて中門まで駈けこんだので、蔵人くろうどたちとの間に、烈しい言いもつれを起していた。掃部はすべての咎めに耳もかけず
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)