渭之津いのつ)” の例文
この渭之津いのつの城からのろしをあげれば、声に応じて西国の諸大名、京の堂上、それに加担するものなどが、ときの声をあげるだろう。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ために、富田とんだの浦は血に赤く、河原は鬼哭啾々きこくしゅうしゅうとして、無残というもおろかなこと、長く、渭之津いのつの城に怪異妖聞かいいようぶんやむことを知らず、という結果になりました
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渭之津いのつ城を脚下にふみ、広大なる大海の襟度きんどに直面しながら、思いのほか、重喜の心が舞躍ぶやくしてこないのも、かれの眉が、ともすると、針で突かれたようになるのも
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえ、尊王の赤心、反徳川の意気、胸に炎々たるものがあっても、下手なことをしたひには、藩祖正勝はんそまさかつ以来の渭之津いのつの城の白壁に、矢玉やだま煙硝玉えんしょうだまの穴があくはめとなる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、阿波はよいぞ阿波の国は——八重のうしおめぐらされて渭之津いのつの城の白壁がある。峰や山には常春とこはるの鳥も歌おうし、そちの好きなあいかすみのようにけむっている……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)