渤海ぼっかい)” の例文
さきに都を落ちて、反董卓はんとうたくの態度を明らかにし、中央から惑星視されていた渤海ぼっかいの太守袁紹えんしょうの手もとへも、曹操のげきがやがて届いてきた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長門ながとは山陽の西陬せいすう僻在へきざいす、しこうして萩城連山のきたおおい、渤海ぼっかいしょうに当る。その地海にそむき山に面す、卑湿ひしつ隠暗。城の東郊は則ち吾が松下村なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
むかし、渤海ぼっかいの船が息をついた港だ、と言います。また格別の景色で。……近い処に増穂のあるのは、貝の名から出たのだそうで、浜のなぎさは美しい。……
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下関までではございません、玄海灘——渤海ぼっかいの波——天の涯、地の角までこの舟を漕ぎかける勢いでございました
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今度もかけちがいましてお目にかからんけりゃ、わが輩は、だ、長駆渤海ぼっかい湾に乗り込んで、太沽タークの砲台に砲丸の一つもお見舞い申さんと、堪忍袋かんにんぶくろがたまらん
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その人我は渤海ぼっかい郡の生まれ、李玄石と名づく、やはり辺先生の所へ学びに往く、かく道伴れとなる已上いじょうは兄弟分になろうと言い出たので、子珍も同意し、定州に至り飲酒食肉し、死生、貴賤
大誦たいしょうは訳官になって深見氏を称した。深見は渤海ぼっかいである。高氏は渤海よりでたからこの氏を称したのである。天漪は書を以て鳴ったもので、浅草寺せんそうじ施無畏せむい匾額へんがくの如きは、人の皆知る所である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
渤海ぼっかい国の使者が来て、国書を奉呈したのであった。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とうの世代から、すでにそんな言葉があるとおり、西に太行たいこう山脈、東に遠く渤海ぼっかいをひかえ、北方に負う万里ノ長城は、北夷ほくいの襲攻にそなえ、不落の名がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後、長男の袁譚えんたんは、甘陵かんりょう、安平、渤海ぼっかい河間かかん(河北省)などの諸地方を荒らして、追々、兵力をあつめ、三男袁尚えんしょう中山ちゅうざん(河北省・保定)にいたのを攻めて、これを奪った。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)