添削てんさく)” の例文
「左様でございます、書物をごらんになり、お歌をお作りになって、よくこの町の娘衆などにも添削てんさくをしておやりになりました」
その後は句の添削てんさくをたのみに行くたびに、二、三句のうちにきっと一句ずつは落葉とか紅葉とかいう題で、おち葉を掃き出してしまえとか
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
真夏の頃、すでに××女に紹介して俳句を習っている筈の老妓からこの物語の作者に珍らしく、和歌の添削てんさくの詠草が届いた。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
内蔵助との知縁は、その国学の講義に列した折と、和歌うた添削てんさくなどを時折消息でしてもらった交渉などから初まっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも春亭、画図つたなくして余が心にかなわざるところは板下をも直して、ことごとく模写を添削てんさくしたる故大当りとなりぬ。」
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼女の手を支配したと同じ気分が、彼女の眼を支配しているので、彼女は訂正や添削てんさくの必要をどこにも認めなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、授業のには弔辞を作ったり、教科書をんだり、御前ごぜん講演の添削てんさくをしたり、外国の新聞記事を翻訳ほんやくしたり、——そう云うことも時々はやらなければならぬ。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いえ、この一年程前から、和歌の先生の御宅で折々御目にかゝりましたが、近頃は父の見舞やら、和歌の添削てんさくやらに事よせて、たび/\私共へも御越しになりました」
俳稿その他の添削てんさくを頼み来る事あり。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
本文にはあまり添削てんさくを加えません。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
真似まねをしたつもりか、添削てんさくした気か、風流のまじわりか、馬鹿か、馬鹿にしたのか、余は思わず首をかたむけた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
榎本君と懇意になるに連れて、榎本君はいっそ何か書いて福地先生の添削てんさくを受けてはどうだと私に勧めた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
粟田口あわたぐちの大僧正のもとへ、添削てんさく詠草えいそうを、持って参ろうと思う。そちも来ぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大方は和歌の添削てんさくを乞いに行ったか、但しは昔物語の講釈でも聴きに行ったか、いずれにしても沙汰なしに出てゆくのは人騒がせであるというような蔭口もきこえたが
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)