深山路みやまじ)” の例文
もはや春もくれて、雲白き南信濃路に夏の眺めを賞せんものと、青年画家の一人は画筆をたずさえて、この深山路みやまじに迷いに迷い入った。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
膝を露顕あらわな素足なるに、恐ろしい深山路みやまじの霜を踏んで、あやしき神の犠牲にえく……なぜか畳は辿々たどたどしく、ものあわれに見えたのである。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月の夜路よみち深山路みやまじかけて、知らない他国に徜徉さまようことはまた、来る年の首途かどでにしよう。帰り風がさっと吹く、と身体からだも寒くなったと云う。私もしきりに胸騒ぎがする。すぐに引返ひっかえして帰ったんだよ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)