汨羅べきら)” の例文
「心を厳しく清く保って主に容れられず、世に容れられず、汨羅べきらに身を投げて歿くなられたの。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かの戦国の時、楚の名士屈原がざんせられて放たるるや、「挙世皆濁れり、我独り清めり」と歎息し、江の浜にいたりて懐沙の賦を作り、石を抱いて汨羅べきらに投ぜんとした。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かねてぞ千葉ちばはなたれぬ。汨羅べきら屈原くつげんならざれば、うらみはなにとかこつべき、大川おほかはみづきよからぬひて、永代えいだいよりの汽船きせん乘込のりこみの歸國きこく姿すがた、まさしうたりとものありし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
屈原くつげん憂憤うっぷんを叙して、そのまさに汨羅べきらに身を投ぜんとして作るところの懐沙之賦かいさのふを長々と引用したとき、司馬遷にはその賦がどうしてもおのれ自身の作品のごとき気がしてしかたがなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)