池袋いけぶくろ)” の例文
男の車は池袋いけぶくろから豊島園としまえんをすぎて、練馬ねりま区の畑の中へはいっていきました。もうそのころは、日がくれて、あたりはまっくらでした。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
募集要項ぼしゅうようこう末尾まつびに印刷されている道順だけをたよりに、東京駅や、上野駅や、新宿駅の雑踏ざっとうをぬけ、池袋いけぶくろから私鉄にのりかえて、ここまでたどりつくのは、かれらにとって
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
池袋いけぶくろから乗り換えて東上線とうじょうせん成増なります駅まで行った。途中の景色が私には非常に気にいった。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
枳園は音羽おとわ洞雲寺どううんじ先塋せんえいに葬られたが、この寺は大正二年八月に巣鴨村すがもむら池袋いけぶくろ丸山まるやま千六百五番地にうつされた。池袋停車場の西十町ばかりで、府立師範学校の西北、祥雲寺しょううんじの隣である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
殊に一番人気のある信乃を主役として五犬士の活躍するは、大塚を本舞台として巣鴨すがも池袋いけぶくろたきがわ王子おうじ・本郷にまたがる半円帯で、我々郊外生活者の遊歩区域が即ち『八犬伝』の名所旧蹟である。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私はなお念の為に、彼がやとったという人力車の宿を聞いて、尋ねて見たところ、送り先が、諸戸の住居のある池袋いけぶくろであったことも分った。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
殆ど一時間近くも走って、男の自動車は、郊外池袋いけぶくろの、駅から十丁もある淋しい広っぱで止った、車を降りたのは確かに彼奴だ。愛之助はとうとう成功したのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
春泥は小説を書き始めた頃は郊外の池袋いけぶくろの小さな借家しゃっかに住んでいたが、それから文名が上り、収入が増すに従って、少しずつ手広な家へ(と云っても大抵は長屋ながやだったが)
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
池袋いけぶくろをすぎたころ、前の車からパーンというはげしい音響が聞こえました。アア、賊はとうとうがまんしきれなくなって、例のポケットのピストルを取りだしたのでしょうか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは、池袋いけぶくろの非常に淋しい場所にある、一軒建ての小住宅なんですが、家の中を検べて見ると、まるで化物屋敷です。押入れの中に、骸骨がぶら下っている。机の上には、人形の首が転がっている。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)