水盃みずさかずき)” の例文
どうせうちを出る時に、水盃みずさかずきは済まして来たんだから、覚悟はとうからきめてるようなものの、いざとなって見ると、こんな所で弁慶べんけい立往生たちおうじょうは御免こうむりたいからね。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それがために、その前夜はかたきの方を眠らせないとか、あるいは水盃みずさかずきに毒を入れて飲ませるとか、種々の臆説を伝える者もあるが、そんなことはしなかったに相違ない。
かたき討雑感 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また今日は親子もろとも死ぬ覚悟で、もう水盃みずさかずきなども済ましていたのかもしれないが、それにしてもその別れようはあまりにみれんげがなく、あまりに凛として非情にさえみえた。
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
三人は型ばかりの水盃みずさかずきを取り交した。思い切っては、誰の眼にも涙はなかった。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると聯隊長が突然下士官の健康を祝すと云いながら、やはりフㇶンガー・ボールの水を一息に飲み干したそうだ。そこでみいる士官も我劣らじと水盃みずさかずきを挙げて下士官の健康を祝したと云うぜ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「我等は妻子と水盃みずさかずきをしてきたのじゃ」
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)