水戸家みとけ)” の例文
真志屋五郎作は神田新石町しんこくちょうの菓子商であった。水戸家みとけ賄方まかないかたを勤めた家で、ある時代からゆえあって世禄せいろく三百俵を給せられていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
古井戸の前には見るから汚らしい古手拭ふるてぬぐいが落ちて居た。私は昔水戸家みとけへ出入りしたとか云うかしら清五郎せいごろうに手を引かれて、生れて始めて、この古庭の片隅、古井戸のほとりを歩いたのであった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
飛退とびしさ低頭平身ていとうへいしんしてうやまひ私儀は赤川大膳とてもと水戸家みとけの藩中なれば紀伊家に此御短刀の傳はりし事は能々よく/\知れり斯る證據のある上は將軍の御落胤ごらくいんに相違なし斯る高貴かうきの御方とも存じ申さず無禮の段恐れ入り奉りぬ幾重いくへにも御免おんゆるしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御覽遊ごらんあそばし殊のほか御顏色ごがんしよくかはらせ給ひにく坊主ばうずめが擧動ふるまひなり仕置しおきの儀は越前が心にまかすべし此段兩人りやうにん同道にて水戸家みとけへ參り左樣に申べしとの上意じやうい直樣すぐさま伊豆守殿越前守同道にて小石川の御館おやかたさして急行いそぎゆきける小石川にては綱條卿つなえだきやう今朝奉行越前病氣全快屆ぜんくわいとゞけを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)