此方向こちらむき)” の例文
暮春ぼしゅんであるけれど、寒い日であった。私は、窓から頭を出して、黒い家を見た。ひょろひょろとした青桐が、木のように見えぬ。人の立っているようだ。此方向こちらむきの黒い壁板には一つも窓がなかった。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)