此方側こっちがわ)” の例文
新橋の川岸へ上って大通りを通り、おのずから新銭座の方へ行くのだから、此方側こっちがわすなわち大通り東側の方をとおって四辺を見れば人はただの一人も居ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
殆ど軒の並んでしまった阪神間は論じるまでもなく、此方側こっちがわけでも斯ういう風に田園と都会を繋ぐ線路が三四本あると言った。今この慌しい鈴実すずなり連中も大阪発展の一縮図だ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「……当りまえに此方側こっちがわから飲まずに、斯う口を開いて向う側へ喰いつこうとするから、お茶は皆胸へこぼれて……あつつ! これはしまった。お鶴や、雑巾ぞうきん、じゃない、布巾ふきんだ布巾だ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
明応めいおう元年さ。西洋で新世界を発見するのに、お互の先祖は例によって城の取りっこをしていた。その頃コロンバスのように海外へ着眼して見給え。アメリカの此方側こっちがわぐらいは日本のものになっている。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)