横断よこぎ)” の例文
車道を横断よこぎっていると、ちょうど動坂どうざかの方から出て来た電車がやって来て、すぐ眼の前でとまったので、急いでその電車の前を横断よこぎろうとした。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と見ると、どうしたことかさ、今いうその檜じゃが、そこらになんにもない路を横断よこぎって見果みはてのつかぬ田圃の中空なかぞらにじのように突出ている、見事な。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
種彦は遠くもあらぬ堀田原ほったわらの住居まで、是非にもお供せねばという門人たちの深切しんせつをも無理に断り、夜涼やりょうの茶屋々々にぎわう並木の大通おおどおり横断よこぎって
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
パアシング将軍が、欧洲派遣の米国軍を引連れて、大西洋を横断よこぎつてゐた時の事、海は将軍の門出を祝福するやうに大きな肩をゆすぶつて笑ひ出した。
広い道を横断よこぎって、お千代は竈河岸へっついがしの方へ曲る細い横町の五、六軒目、深草ふかくさというあかりを出した家の格子戸を明けると、顔を見覚えていた女中が取次に出て
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
弘光はこう云って、私と離れて電車通りを横断よこぎって、日本橋のほうへ往ったが、その後姿は、黄昏ゆうぐれきいろな光の底にうごめいている人群の中へかくれてしまった。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)