楼梯はしごだん)” の例文
どうも何処から聞えるのか、其はく解らなかつたが、まあ楼梯はしごだんの下あたり、暗い廊下の辺ででもあるか、誰かしら声をむ様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その時、種夫が一生懸命に楼梯はしごだんにつかまってノコノコ階下したから上って来た。ヒョッコリ頭を出したので、三吉は子供の方へって行った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とお雪は楼梯はしごだんの下から声を掛けたので、三吉も下りて来た。三人一緒に成ってからは、三吉も機嫌きげんを直した。叔母や姪はむつまじそうに笑った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今はの部屋の内にあの先輩の書いたものは一冊も出て居ない。斯う考へて、すこし安心して、さて顔を洗ふつもりで、急いで楼梯はしごだんを下りた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
楼梯はしごだんのところから階下したのぞいて、小僧に吩咐いいつけた。間もなく小僧はウンと大きく削った花鰹節を二皿持って上って来た。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『あゝ、瀬川君は未だくないんだらう。』う銀之助は自分で自分に言ひ乍ら、準教員と一緒に楼梯はしごだんを下りて行つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
急に二人の子供の喧嘩けんかする声を聞きつけた時は、岸本は二階の方の自分の部屋にいた。彼は急いで楼梯はしごだんけ降りた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
豊世は一歩ひとあしさきへ帰った。正太は叔父にいて二階の楼梯はしごだんを上った。正太は三吉から受取った手紙の礼を言った後で
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と婆やが楼梯はしごだんの下のところへ来て呼んだ。お粂ちゃんとは、よく岸本の家へ遊びに来る近所の針医の娘の名だ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自炊する浴客が多い。宿では部屋だけでも貸す。それに部屋付のかまどが具えてある。浴客は下駄穿げたばきのまま庭からすぐ楼梯はしごだんを上って、楼上の部屋へ通うことも出来る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
楼梯はしごだんの下から呼ぶ節子の声を聞きつけた時は、岸本は自分の書斎に居た。客のあるたびに彼は胸を騒がせた。その度に、節子を隠そうとする心が何よりも先におこって来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薄暗い壁に添うて楼梯はしごだんを昇ると、二階の部屋の空気は穴の中のように蒸暑かった。丁度豊世はまだ簿記の学校の方に居る時で、間に合せに集められた自炊の道具がお種の眼に映った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
斯う叔父さんは言ひ捨てゝ置いて、やがて一段づゝ楼梯はしごだんを上つて行く音をさせた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とお栄は楼梯はしごだんの下のところへ行つて声を掛けた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)