極道ごくどう)” の例文
どうか不孝の罪は勘忍して下さい。わたしは極道ごくどうに生れましたが、一家の大恩だけは返しました。それがせめてもの心やりです。……
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「驚いた老人としよりだ。酒も強いが、何ていう芸人だろう。してみると、俺などは、極道ごくどうにかけると、まだまだくちばしが青いのかも知れねえ」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「通りやがらねえな、こん畜生! 手をやかせやがって、この極道ごくどうめが!」と、口の中でぶつぶつ言っているところであった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「風来坊の乞食の無頼漢ならずもののろくでなしの極道ごくどうの傴僂野郎め、巾着切きんちゃくきりの矢尻切りの嘘つきの恥知らずのはりつけ野郎め、おまけに」「お父さま、——」
私は極道ごくどうな青年だった。船員が極り切って着ている、続きの菜っ葉服が、矢っ張り私の唯一の衣類であった。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼処あそこの家の一族は兄さん達でも叔父さんなどでも皆一廉ひとかど極道ごくどう者であり、そう云う妙子自身の父も、よく遊ぶ人であったのを幼い時から見て知っているので
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……勝手な極道ごくどうとか、遊蕩ゆうとうとかで行留りになった男の、名はていのいい心中だが、死んでく道連れにされてたまるものではない。——その上、一人身ではないそうだ。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつあ、たった一度、それ、極道ごくどう長屋の鉄の野郎やろうがお手あてになって、おれが関係に付き添って行ったことがあるだろう? あの時、お白洲しらすでお調べをなすったお顔がまだ眼の底にこびりついてらあ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
酒——はよくないものと、極道ごくどうの毒水みたいにいうのは、あれや酒のせいじゃあるまいて。酒はよいものじゃが、飲みがわるいのじゃ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうか不孝は勘忍して下さい、わたしは極道ごくどうに生まれましたが、とにかく一家の恩だけは返す事が出来たのですから、………
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お多福風から睾丸炎になるいうことかてあるもんやそうですなあ? 尤もそないいうてるだけで、ほんまは極道ごくどうしたのんかも分れしませんけど、とにかくそいからその娘さんえらい綿貫憎んでて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
槐橋かいきょう先生といえば、はれもの患者もなおしなすったが、ずいぶん、女遊びや極道ごくどうもやり尽しなすったはず。ここらが年貢ねんぐの納めどきですぜ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまた言い草がいじゃないの?『お前さんにでも来て貰えりゃ、あいつの極道ごくどうもやみそうだから』
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「なんじゃと? 野郎がおふくろを連れに帰ってきたって。とんでもねえこったわ。何で極道ごくどう野郎にそんな殊勝な料簡りょうけんが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それ見い。言えと言うから、言えば、なおおぬしは、わしを殺す気になるわ。人殺し。極道ごくどう。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
極道ごくどうにかけては、ずっと先輩の亀次郎にも舌を巻かせて、かれはお袖との恋一つ抱いて一気に堕落だらくのどん底まで行ってしまうかとさえおもわれた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その子を見せてくれ。よ。その子を。見せないか。やい、極道ごくどう。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いわゆる女房泣かせの極道ごくどうをし尽くし、大酒と遊惰ゆうだに健康をそこねて、もう数年前に——藤吉郎がどこか戦場に出ている留守の間に、中村の茅屋あばらやで病死したというのが
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「畜生。人でなし。太郎。やい。極道ごくどう。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
滑川なめりがわの妓家で、双方、極道ごくどうの面をさらけ合って、飲んで、喧嘩別れをしていらい、逆に、あれからはどっちも「おもしろいやつだ」と見て、この都でもつきあいをつづけていた。
「なんとか、いちど、とっくりお話をしてみたいものだ。その道にかけての極道ごくどうぱんを、この高俅から聞こえあげたら、かならずまたなき者と、お目をかけてくださるに違いないが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西施せいし、小観音、おだまき、箱根、小槌、獅子丸などどれひとり道誉と馴じみ少ないものはない。わけて白拍子茶屋の白龍は極道ごくどうな道誉をウラのウラまで知りつくしているおかみであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍のくせに、極道ごくどうをし尽し、勘当かんどうもされ、浪人の味も知っている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されば極道ごくどうにかけては、あなたにもゆずりません。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「又八、機嫌なおせ、今のは、ばばの冗談じゃ。れの心が定まって、元のような極道ごくどうもせぬことは、ようこの老母ははも見ているわいの。——したがさて、武蔵と吉岡の衆との果し合いが明日の夜明けとは急なことじゃな」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(また、極道ごくどうか)
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)