柏屋かしわや)” の例文
古市の大楼には柏屋かしわや、油屋、備前屋、杉本屋などいうのがあります。これらの四軒には、いずれも名物の伊勢音頭いせおんどというものがあります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも花見ではない、初桜はつざくら故余り人は出ません、其の頃には海老屋えびや扇屋おうぎやの他にい料理茶屋がありまして、柏屋かしわやというは可なり小綺麗にして居りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「保本、おまえこの柏屋かしわやといっしょにいって事情を聞いておいてくれ、おれは半刻ほどしたら戻る」
ひょろ松は、六所宮ろくしょのみやのそばの柏屋かしわやという宿屋へ顎十郎を押しあげておいて、自分ひとりだけ実家へ挨拶に行ったが、ものの一刻ほどすると、大汗になってもどって来て
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これは、この柏屋かしわやねえさんの、小芳こよしと云うものの妹分で、綱次つなじと聞えた流行妓はやりっこである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さやうで御座います。私は南伝馬町みなみてんまちよう幸菱こうびしと申します紙問屋の支配人を致してをりまして、狭山元輔さやまもとすけと申しまする。又これは新橋に勤を致してをります者で、柏屋かしわやの愛子と申しまする」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その一軒の柏屋かしわやというのへ、一挺の駕籠が入って行った。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
柳橋の小芳さんとこだ。柏屋かしわや綱次つなじと云う美しいのが、忽然こつぜんとしてあらわれらあ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おさげ申してもよろしゅうございますか」宿の婢が食膳をさげに来た、「今夜はこの下の柏屋かしわやに軍談講釈がかかるそうでございます、もしおいでなさいますのでしたらお席をとって置きましょうか」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ふむ、三里半だなし。そして何かい柏屋かしわやと云う温泉宿は在るかね。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「神奈川じゃ柏屋かしわやで泊ったね」
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)