もく)” の例文
そこでは権頭に中将にもくの三人が飲んでいる、だいぶいい機嫌とみえて鼻唄などを唄っていたが、姐さんの顔を見ると盃をおいた。
うなづたまひ、卷返まきかへしてたか右手めてさゝげられ、左手ゆんでべて「もく、」「は」とまをして御間近おんまぢか進出すゝみいづれば、くだん誓文せいもんをたまはりつ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
取り上げて、障子しょうじの方へ向けて見る。障子には植木鉢の葉蘭はらんの影が暖かそうに写っている。首をげて、のぞき込むと、もくの字が小さく見える。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
番所には見廻り同心賀田もく左衞門、土地の御用聞、赤城の藤八などが、雁字がんじがらめにした林彦三郎を護つて、與力の出役を待つてゐるのでした。
これは渋川のもく八と云う奴で、元より峰松と馴合って居りますからはずしたので、車を林のかげに置き、先へ廻って忍んで居りましたがゴソ/″\と籔蔭やぶかげから出て
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
田舎から呼寄せられて離屋はなれに宿泊していた大工のもくさんからも色々の話を聞かされたがこれにはずいぶん露骨な性的描写が入交いりまじっていたが、重兵衛さんの場合には
重兵衛さんの一家 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
近衛このえ殿老女村岡、御蔵おくら小舎人こどねり山科やましな出雲、三条殿家来丹羽豊前ぶぜん、一条殿家来若松もく、久我殿家来春日讃岐さぬき、三条殿家来森寺困幡いなば、一条殿家来入江雅楽うた、大覚寺門跡もんぜき六物ろくぶつ空万くうまん、三条殿家来富田織部。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
けつして心服しんぷくつかまつらじ、しかするときもく命令めいれいおこなはれで、そむものきたらむには、かへつ國家こくからんとならむこと、憂慮きづかはしくさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なるほどそこへ権頭ごんのかみもく中将ちゅうじょうの三人が入って来た。参蔵殿はじめ役人どもの狼狽ろうばいはみるも気の毒であったが、使節は厳粛に威儀を正して云った。
それから一刻(二時間)ばかり、掛り與力、笹野新三郎出役、賀田もく左衞門や、藤八、平次などの報告を聽いて
はたもくしんずるものすくなければ、その命令めいれいおこなはれじ、をりもがなあれかしと時機じきいたるを待給まちたまひぬ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
肥えた猪首いくびのが「権頭ごんのかみ」熊のようにひげだらけで、しかし声のばかげて優しい男が「もく」という。
賀田もく左衞門はそつぽを向きました。
敬さんやもくさんとはまるで性質が違います、上の二人よりもしっかり者です、おじいさんがあまやかすし、末っ子だからあれですけれども、しんはしっかりした賢い子です、ええ
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もくさん、これ、なあに?……」
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)