木遁もくとん)” の例文
映画の中で行ふ種類の木遁もくとんの術の手並でも、却々もつて彼等のひねくれた眼力を誤魔化し、安定感を与へてやることはできません。
女占師の前にて (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
忍術には水遁すいとんの術、火遁かとんの術、木遁もくとんの術などいろいろありますが、小林君の発明したのは「書遁しょとんの術」とでもいうのでしょう。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
およそ忍術にんじゅつというものも夜陰やいんなればこそ鼠行そぎょうほうもおこなわれ、木あればこそ木遁もくとん、火あればこそ火遁かとんじゅつもやれようが、この白昼はくちゅう、この試合場しあいじょうのなかで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの離屋の雨戸を締めきつて、二日がかりで考へて見ましたが、まるつきり見當はつきませんよ、——こいつは忍術か何んかですね、木遁もくとんの術といふのがあるでせう
火遁かとん水遁すいとん木遁もくとん金遁きんとんさては土遁どとんの合図もなしに、ふわりと現われ、ふわりと消える、白い雲よりなお身も軽い、白雲師匠の秘伝を受けて、受けて返すはへぼ弓、へぼ矢
猿飛佐助 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「あやしいことはさらにない。ありふれた木遁もくとん隠形おんぎょうでちょっときさまをからかってみたのだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして身を屈して行けば、幾分か白い姿を紛らわしますから、木遁もくとんの法の機智ともいえます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浮体ふたいの法、飛足ひそく呼吸いき遠知えんちじゅつ木遁もくとんその他の隠形おんぎょうなど、みなかれが何十年となく、深山にくらしていたたまもので、それはだれでもこうをつめば、できないふしぎや魔力ではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)