最奥さいおう)” の例文
この悲哀ははなやかな青春の悲哀でもなく、単に男女の恋の上の悲哀でもなく、人生の最奥さいおうひそんでいるある大きな悲哀だ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
悟浄は、この庵室にひと月ばかり滞在した。その間、かれも彼らとともに自然詩人となって宇宙の調和をたたえ、その最奥さいおうの生命に同化することを願うた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
仏祖の行履の最奥さいおうの意味は、固定せる概念によって伝えられずに、生きた人格の力として伝えられている。人は知識として受け得ないものを、直接に人格をもって承当じょうとうして来たのである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
自然の最奥さいおうに秘める暗黒なる力に対する厭世えんせいの情は今彼の胸を簇々むらむらとして襲った。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)