易経えききょう)” の例文
のみならず中には、多少易経えききょうの端を読みかじッている手輩てあいなどもあって、素見ひやかしのうちでも売卜者ばいぼくしゃたちには苦手にがてな部類の者と見たので
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
益々力を入れて八歳の時には弘道館述義と、詩経しきょうの一部と、易経えききょうの一部を教えて下すったものであるが、孝経こうきょうは、どうしたものか教えて下さらなかった。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
道教思想の萌芽ほうが老聃ろうたん出現の遠い以前に見られる。シナ古代の記録、特に易経えききょうは老子の思想の先駆をなしている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
だから主人がこの文章を尊敬する唯一の理由は、道家どうけで道徳経を尊敬し、儒家じゅか易経えききょうを尊敬し、禅家ぜんけ臨済録りんざいろくを尊敬すると一般で全く分らんからである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たとえば、儒者が易経えききょうを講ずれども、ただその論理を講ずるのみにして、卜筮ぼくぜいもてあそぶを恥ずるが如し。
物理学の要用 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
エヘン、そんならその古語、すなわちこれは『易経えききょう』に在ることばだが、「其臭如蘭」と云うこの蘭はそもそも何か。それは正に菊科植物に属する Eupatorium 属中のフジバカマよ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それから老人は易経えききょうを二三枚ひっくり返して
すくなくも、その時代の知識層から庶民に至るまでが、天文の暦数れきすう易経えききょうの五行説ぎょうせつに対しては、そう信じていたものである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燈火明るきとき吉事あり——という易経えききょうの一辞句を思いだしたからである。一点、彼の胸にも、希望の灯がともった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
べつに天下の地を相し大城を築いて住もう。——易経えききょうにもいう、卦面けめんに非ず解心げしんにありと。いずれにしても、またなき吉日。明日こそ待たれる。さあ、出ようか
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、例によって易経えききょうをひき、伝奏まで書をのぼす折にも、ひとり嘆息して涙をながしていたと聞えた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)