日覆ひおおい)” の例文
それから程なく、往来から家の中の見えるのはよくないからと、格子の前に白い日覆ひおおいのような物を掛けるようになりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
役所では窓に黄いろな日覆ひおおいもできましたし隣りの所長の室には電気会社から寄贈になった直径七デシもある大きな扇風機もえつけられました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
莞爾にっこりしたが、勝山の世盛よざかりには、団扇車で侍女こしもとが、その湯上りの霞を払ったかんざしの花の撫子なでしこの露をいと日覆ひおおいには、よその見る目もあわれであった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
西日を除けて、一階も二階も三階も、西の窓すっかり日覆ひおおいをした旅館がやや近くに見えた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
白いズックの日覆ひおおい……「ドラッグ」……「請合薬うけあいぐすり」……見覚えのある丸ゴシックの書体、そして、その奥のガラス張りの中の人体模型、その男は、何々ドラッグという商号を持った
白昼夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
日覆ひおおいに松の落葉の生れけり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
何より困ったのは、赤道に近い太陽の熱さでしたが、三人は残っていた一本のオールをボートの中にはすに立てて、みんなの上着をつないで日覆ひおおいのようなものをこしらえ、やっと熱さをしのぎました。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
浅間背に日覆ひおおいしたる家並び
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)