旅舎りょしゃ)” の例文
旧字:旅舍
「きょうはちと、御主君の御気色がよろしくありません。旅舎りょしゃ退さがって、しばらくお待ち給わりますまいか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この数日のあいだに、旅客の去る者はすくなく、留る者は多く、どこの旅舎りょしゃもいっぱいで、旅籠はたごの前には必ずある駒繋こまつなぎの棒杭さえ、馬と馬で混み合っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、なるほど、出府しゅっぷのみぎり、途上の旅舎りょしゃで、思い出ばなしから、ふとそんなことを申した覚えがある。——それもはや十年も前なのに、よう忘れずにおるものじゃ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅舎りょしゃの不便で、一例をいえば、朝立ちの際に、弁当ひとつ拵えさせても、餅を笹の葉で巻いた物とか、飯をいきなりかしわ乾葉ほしばでくるんで出すとか——藤原朝時代の原始的なならわしを
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅の旅舎りょしゃでも帝の幽室は、もちろん、昼夜なき武士どもの目で囲まれていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)