旅人たびにん)” の例文
旅人たびにんだよ、この通り、旅路だから草鞋わらじ脚絆きゃはんという足ごしらえだあな、まずゆるゆるこれを取らしておくれ——それ、お洗足すすぎの用意用意
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この土地ははつ旅人たびにん、しかも、関東生粋のしたたか者——そういう面通めんどおしを、凄味たっぷりでかせて、玉井金五郎脅迫を買って出た。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「違うよ金蓮。虎を退治たもんだから、県の知事さんが、無理に弟を都頭に取立てたので、弟はこの街へ来る前までは、ただの旅人たびにんだったのさ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたかも徳川時代に、博徒の親分というものが各々縄張りを定め、旅人たびにんと呼ばれる渡り博徒が、そこへ来て「草鞋わらじを脱ぐ」という有様であったに相違ない。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
これはたまらぬ、いくら娘の祝いだというても、こんなに京大阪の旅人たびにんまで聞き伝えて見に来るようでは、今に身代限りになりそうだ。こんなに高価たかく付いた押絵があるものじゃない。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なあに旅人たびにんですよ。といっても、もう一年近くも家人同様に、わがままをいっている気楽者きらくもンでございますがね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いらねエや、おめえ旅人たびにんじゃないか。旅人からそんな物を貰うと、部屋の者に叱られら」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは立派な旅人たびにんです、同じ歩くにもその形で、旅なれた者か否かはすぐわかる、飛脚や修業の侍などの間には、歩術という足と呼吸と身だしなみの定則さえあったといいます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅人たびにんでございます。親方のお名前を承知しまして、お頼り申してまいりました」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)