撒水まきみず)” の例文
平次はそれに構わず、庭へ降りて四方あたりを見廻して居りましたが、やがて、駕籠を据えた跡らしいものを撒水まきみず湿しめりの上に見出すと、その辺の土などを念入りに調べた末
とおり一つの裏町ながら、撒水まきみずの跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎かげろうの立つ長閑のどかさに、彩色した貝は一枚々々、甘い蜂、かんばしき蝶になって舞いそうなのに、ブンブンとうなるはあぶよ、口々にやかましい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この井戸は水の質も良く、水の量も比較的に多いので、覿面てきめんに苦しむほどのことはなかったが、一日のうちで二時間ないし三時間は汲めないような日もあった。庭の撒水まきみずを倹約する日もあった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)