“搾(し)” の例文
年末のせいで、蝋搾(し)めは一槽(そう)しか立っていなかったが、櫨(はぜ)の実を蒸す匂いは、いつものように、温かく小屋の中に流れていた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
世界は次第に狭くなつて、やがては私を搾(し)め殺しさうだつた。だが私は生きたかつた。生きたかつた! ——然るに、自己をなくしてゐた、即ち私は唖だつた。
我が生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
それから段々慾が増長し、御新造様のくすねた金を引出して、五両一の下金貸(したかねかし)、貧乏人の喉を搾(し)めて高利を貪り仕上げた身代、貯るほど穢(きたな)くなる灰吹同前の貴公達の金だ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに伴(つ)れて、彼女の内心から搾(し)め出される膏脂(こうし)が皮膚につややかさを流した。彼女の皮膚が生れてはじめての不思議な滑らかさを有(も)つた。処女が母性の肉体に花咲いた様だつた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
暗い冬の日が梁(はり)や壁を搾(し)めつけるやうに
暗い天候 (新字旧仮名) / 中原中也(著)