かか)” の例文
とばりの背後より立ち出づ。メフィストフェレスが手に帷をかかげて顧みるとき、古風なる臥床に横はれるファウストの姿、見物に見ゆ。)
準平は平素県令国貞廉平くにさだれんぺいの施設にあきたらなかったが、宴たけなわなる時、国貞の前に進んでさかずきを献じ、さて「おさかなは」と呼びつつ、国貞にそむいて立ち、かかげてしりあらわしたそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この時権十郎の紀伊国屋文左衛門が暖簾をかかげて出る。そのこしらえは唐桟の羽織を著、脇差わきざしを差し駒下駄こまげた穿いている。背後うしろには東栄が蛇の目傘を持って附いている。合方は一中節を奏する。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
未だかつてかかげられたことのない秘密の垂衣たれぎぬの背後に
(手にて寝台の帷の一ひらをかかぐ。)