)” の例文
したがってなかなか珍談があるなかにも、悪いやつらが腕にりをかけて天下を横行したから、捕物なんかにも変り種がすくなくない。
「えゝ、なさけねえ奴等やつらだな」ぢいさんはかけかみてた。店先みせさき駄菓子だぐわしれた店臺みせだいをがた/\とうごかすものがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
最前さいぜんはただすぎひのき指物さしもの膳箱ぜんばこなどを製し、元結もとゆい紙糸かみいとる等に過ぎざりしもの、次第にその仕事の種類を増し、下駄げたからかさを作る者あり、提灯ちょうちんを張る者あり
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
丈夫で眞黒な鐵の鍵に、まだ新しい木の札を附けたまゝ、麻糸をつた紐で嚴重につるしてあります。
その苧糸おいとを紡ぐということは、ジンキの篠巻きよりもはるかに辛気しんきな作業で、一枚の衣物になるのはその糸の全長の総計だけ、指のさきでらなければならなかったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お綱の体は、かれの足のほうへ仆れて、霧の中へ繭糸まゆいとのようにれて寝た。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お妙はねたさまに顔だけを障子で隠して、そのつかまった縁を、するする二三度、烈しくたなそここすったが、せなって、切なそうに身を曲げて、遠い所のように、つい襖の彼方あなたの茶の間を覗くと
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すっかりりを戻して、フラフラと昔のような心持になってしまいました。
と脇腹へ両肱りょうひじを、しっかりついて、掻竦かいすくむように脊筋をる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)