拒絶ことわ)” の例文
接待とりもちの村嬢や酌婦おんななどが、銚子を持って右往左往し、拒絶ことわる声、進める声、からかう声、笑う声、景気よさは何時いつまでも続いた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
怒りと嘲笑あざけりを浮べた信吾の顔が、時々胸に浮んだ。智恵子は、今日その信吾の厚かましくも言出でた恋を、小気味よく拒絶ことわつて了つたのだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
金子の入要な旅先のことではあり、そうかと言って拒絶ことわれば後が怖いし、ほとほと困じ果てた助三郎は、言われるままにお召の上下を脱ぎ与えて栄太と衣裳を交換したのであった。
ていよく拒絶ことわったばかりでなく、国境いにおいて斬殺する目的のもとに「東目送り」という陰険きわまる法を、あえて行なうことになりました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
松崎清左衛門は何が不足で葉之助の入門を拒絶ことわったのであろう? それは誰にも解らない。しかし当の葉之助にとっては無念千万の限りであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
拒絶ことわられ、やむを得ず、一当てあてて……フッフッ、若衆武士殿を気絶させましたが、どうやらそれが貴殿らしい。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
忠義無類の花村様、なんで主命を拒絶ことわるものか。謹んでお受けをしたそうだ。正しくはお受けはしたけれどそれと同時いっしょに花村様は一つ条件を出されたそうだ。条件というのは他でもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この若侍は凛々りりし過ぎるよ。接吻くちづけをしても駄目かもしれない。でもわたしはこういう男も好きだよ。妾はこの男を手に入れてみせる。……でもこの男は拒絶ことわるだろうよ。あの北条左内様のように。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
結局お粂は拒絶ことわられたのである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)