打目戍うちまも)” の例文
と敏子は早速第一を放った。郁子と目くばせの中に今日は攻勢を取ることと相談がきまったのである。僕は側から仔細に打目戍うちまもっている。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一斉に彼のおもてを注視せし風早と蒲田とのまなこは、更に相合うていかれるを、再び彼方あなたに差向けて、いとどきびし打目戍うちまもれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
余は深く腕を組みて、考古学者が沙漠に立つ埃及エヂプト怪像スフインクスを打仰ぐが如く、黙然として其の姿を打目戍うちまもり候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と営業課長はツク/″\と旧師を打目戍うちまもった。世上の人間が皆こんな風だったら百貨店は立行くまいと考えたのかも知れない。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もしそれがにぎやかな都会の中央であったならば、われわれは無限の光栄に包まれ感謝の涙にその眼を曇らして、一国の繁華を代表する偉大の背景を打目戍うちまもるであろう。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貫一のまなこはその全身の力をあつめて、思悩める宮が顔を鋭く打目戍うちまもれり。五歩行き、七歩行き、十歩を行けども、彼の答はあらざりき。貫一は空を仰ぎて太息ためいきしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と絹子さんは感心して、も頼もしそうに将来のお婿さんを打目戍うちまもっていた。僕はお邪魔になるといけないと思って、間もなく勉強部屋に引き返した。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
金剛石ダイアモンドと光を争ひし目は惜気をしげも無くみはりて時計のセコンドを刻むを打目戍うちまもれり。火にかざせる彼の手を見よ、玉の如くなり。さらば友禅模様ある紫縮緬むらさきちりめん半襟はんえりつつまれたる彼の胸を想へ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分は猶更驚いて思はず其の顏を打目戍うちまもつたが、折好くも身近に立つて居た其の場の機會で、自分は大使の夫人から、「此の方もあなたと同じやうに半分歐羅巴人ヨオロツパじんになつた方です。」
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
山下さんは少時しばらく打目戍うちまもっていた後、三郎君を促して歩き出した。道筋が俊一君と絹子さんの足元に横たわっている。山下さんは池の面を眺めながら近づいた。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
老人も老夫人も頼もしそうに打目戍うちまもった。五尺七寸、眉目秀麗びもくしゅうれい、申分ないお婿さんだ。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と言って、夫人は何れくらい利いたか見定めるように良人の顔色を打目戍うちまもった。
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と肚の中で言いながら、新太郎君は父親の顔を打目戍うちまもった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とお父さんは南さんの頭をツク/″\と打目戍うちまもった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と社長はこの時相手の顔を打目戍うちまもるのを常とする。
社長秘書 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と堀尾君は小手をかざして相手を打目戍うちまもった。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と団さんも青ジャケツ達を打目戍うちまもった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と田鶴子さんが打目戍うちまもった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)