才覚さいかく)” の例文
旧字:才覺
そこで、私になんとか狐肉を才覚さいかくする思案はあるまいかと相談を持ちかけるのである。しかし、これには私もちょっと当惑した。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
叔父は枡屋善作ますやぜんさく(一説によれば善兵衛ぜんべえ)と云う、才覚さいかくいた旅籠屋はたごやである。(註四)伝吉は下男部屋に起臥きがしながら仇打あだうちの工夫くふうらしつづけた。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「よし、わかった。そんならその金は拙者が引き受けて才覚さいかくいたす。それはよいが、掛け合いには誰が参る?」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……おい千太、念のために聞くが、では、その忠助という手代は、石井先生にも判らねえような巧妙な毒を盛れるような、そんな才覚さいかくのありそうなやつなのか
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いつも於霜おしも才覚さいかくで、被衣かつぎして召使の女に偽装したり、門番の合鍵を手に入れたりして礼拝堂に通った。
月末の不足を自分で才覚さいかくするなら格別、もしそれさえできないというなら、これから先の送金も、見せしめのため、当分見合せるかも知れないというのが父の実際の考えらしかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前にあげておいた二通りの親棄山、すなわち孫の言葉と老人の智恵才覚さいかくと、二つの外国できの昔話とちがっている点が、こちらの二つの話、すなわち姨捨山と親棄山おやすてやまとではたがいによく似ている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)