憎悪ぞうを)” の例文
かれは人に捕へられて、憎悪ぞうをあまり、その火の中に投ぜられたのであらうか、それとも又、ひと微笑ほゝゑんで身をその中に投じたのであらうか。それは恐らく誰も知るまい。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それから早くも五十年——。今は回顧するもいやだ。私の回顧は自己嫌悪と悔恨と社会に対する憎悪ぞうをと運命の飜弄ほんろうにいきどほりをよびさますものにすぎないからである。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
アヽ、我等は何等の多幸多福ぞや、独り此間このあひだに立ちてかつて同胞の情感を傷害せらるゝことなきなり、ただれのみならず、彼等の嫉妬しつと憎悪ぞうを奪掠だつりやく、殺傷の不義非道に煩悶はんもん苦悩するを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたしは彼の執着を憎悪ぞうをした。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
自分の全身にはほとん火焔くわえんを帯びた不動尊もたゞならざる、憎悪ぞうを怨恨ゑんこん嫉妬しつとなどの徹骨の苦々しい情が、寸時もじつとして居られぬほどにむらがつて来て、口惜くやしくつて/\、忌々いま/\しくつて/\
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)