愛弟子まなでし)” の例文
両親並びにペテロ、ヤコブ、ヨハネの三人の愛弟子まなでしだけを連れて病室に進み入り、少女の手を取って「タリタ、クミ」と言い給うた。
居士は愛弟子まなでし竹童をかかえて、いったいどこへつれていく気か? やがて森林をぬけて、紫野むらさきののはて、舟岡山ふなおかやまの道を一さんにのぼりだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがまた私は、やはり先生の愛弟子まなでしである杉村広蔵君の隣に住み、親しく交るようになったというのも、左右田先生につながる因縁であろうか。
読書遍歴 (新字新仮名) / 三木清(著)
少女時代すでに天才をうたわれ、さる独逸ドイツ人音楽教授の愛弟子まなでしとなって、年と共にそのは進み、今では懇望こんもうされてステージに立つ事も屡々しばしばであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ことごとくこれをこの一書の中に注ぎ込んだ過去の苦心談は、先生の愛弟子まなでし山県五十雄やまがたいそお君からくわしく聞いて知っている。
創立以来勤続三十年といふ漢文の老教師は、癖になつてゐる鉄縁の老眼鏡を気忙きぜはしく耳にはさんだりはづしたりしながら、相好さうがうくづした笑顔で愛弟子まなでしの成功を自慢した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
タイタイ先生は愛弟子まなでしの前で男を下げるのは残念だと思つたけれども、思ひきつてきくことにした。
破門 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
愛弟子まなでしの変死と聞いて少からず驚いた白亭が、多忙の中を無理にも頼んで連れて来たものであろう。
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「お言葉ではござりますが、まがいもなく、女形雪之丞、脇田一松斎の愛弟子まなでしに、相違ござりませぬ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一柳斎は、むろん大喜びで久方振りの愛弟子まなでしに稽古を付けてくれたが、稽古が済むと一柳斎が
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まして、ワグナーはその後友人にして愛弟子まなでしなるハンス・フォン・ビューローの妻にして、リストの娘なるコジマと——正式ではあるが好ましからざる——再婚をしているのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
松井須磨子は早稲田生えぬきの島村抱月の愛弟子まなでしである、一体早稲田派が宣伝に巧みなのは大隈侯以来の伝統である、朝に失敗した大隈が野に下って、学校を立て言論界へ多くの人材を送った
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……帰つたら、すぐに、かれの愛弟子まなでし文楽に話すことにしよう。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
彼もまた、一年ぶりに会った愛弟子まなでしたちに対して、なんともいい得ない感情につつまれているらしいのであった。ただ一言ひとこと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は小池助手から、事の次第を聞き取ると、痛ましげに愛弟子まなでしのなきがらを見おろしながら
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
菊之丞は、愛弟子まなでしの、思い入った容子ようすを、あわれと見たように、やさしくうなずいて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
庫裡くりへ帰れば女がいる、憎い女がいる。老禅師を失脚させ、その愛弟子まなでしの命を奪った女が、猫を抱いて眠っている。それを追究することをしないで、何をこんなところへきてうろうろしていたのだ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中村菊之丞の愛弟子まなでし雪之丞——生れついての河原かわら者ではなかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
果心居士かしんこじ愛弟子まなでし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)