情郎いろおとこ)” の例文
情郎いろおとこは居ないか、その節邪魔にすると棄置かんよ、などとおお上段に斬込きりこんで、臆面おくめんもなく遊びに来て、最初は娘の謂うごとく、若山を兄だと思っていた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
封じを固くして襟の中へ縫付けて置くのはおかしゅうございますね、もっとも芸者などは自分の情郎いろおとこや何かを親の積りにして、世間へ知れないようにお父様とっさま/\とごまかすてえ事を聞いて居りますよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今、その一例を挙ぐるに、伊豆下田近傍のもの、自身の妻に情郎いろおとこあるかなきかをコックリに向かってたずねたるに、情郎ありという答えを得たるをもって、ただちにその妻に離縁を命じたりという。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そんな心懸こころがけじゃあ盲目めくらの夫の前で、情郎いろおとこ巫山戯ふざけかねはしないだろう。いやになったらさっぱりと突出すが可いじゃあないか、あわれななさけないものをつかまえて、いじめるなあ残酷だ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)