悚立よだ)” の例文
昼間でも狼の噂を聞くと、わたしは身の毛が悚立よだつような……。(身をふるわせる。)わたしは狼に取憑とりつかれたのかも知れない。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と行逢うものは身の毛を悚立よだてて、鶯の声のなまめいて濡れたのさえ、昼間も時鳥ほととぎすく音を怪む。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
市郎は殆ど夢中で駈寄かけよった。消えかかる幾多の松明の火が一時にここへ集められた。の光に照し出されたる屍体の有様ありさまは、身の毛も悚立よだつばかりに残酷なるものであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
座敷は三人が一組、姉株の芸妓げいしゃが二人、これに蝶吉が、下方したかたを持っていてくのであった、といって、いつか雪の降る、身の毛を悚立よだてて梓にその頃の難苦を語ったことがある。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、今ながめても身の毛が悚立よだつ。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)