復習さら)” の例文
鏡台の前に坐つてゐたかゝへの一人の蝶子が言ふと、咲子はまた自分の頭脳あたまへしつかり詰めこむやうに復習さらつてから、下駄を突かけた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
お浪とふたりで復習さらっていましただけに、時疫じやみで枕もあがらぬということで案じておりましたところ、七日の夕方の五ツごろ
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
奥の座敷の方から涼子が復習さらうらしく聞えて来る琴の音は余計にその茶の間を静かにした。吉本さんの噂が出た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
士族町の中に普通の人の邸宅のやうな料理屋があつて、雨の降る日に、三味線を復習さらふ音がしめやかに聞えると言つたやうな風情はこの町でなくては見られない。
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
『そうかな。吉蔵もうお寝よ、朝早く起きてお復習さらいな。お婆さん早く被中炉あんかを入れておやんな。』
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
足が悪いのである。すぐ後から安藤対馬守つしまのかみが、頭脳のなかで謡曲うたいでも復習さらえているように、黙々と、しかし朗かな顔付きでやって来る。太田若狭守が大きく手を振って、足早に追いついた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あきれたものだ。まアいいやな、俺が詳しく復習さらってやろう」
あの書斎へよく聞えて来た常磐津ときわずや長唄の三味線のかわりに、そこにはピアノを復習さらう音が高い建築物の上の方から聞えて来た。それが彼の頭の上でした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あきれたものだ。まアいいやな、俺が詳しく復習さらってやろう」
灰燼かいじんちまたと化し去ることを免れた旅窓の外に見える町々も、変らずにある部屋の内の道具も、もう一度彼を迎えてくれるかのように見えた。ピアノを復習さらう音がた聞えて来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)