御菜おかず)” の例文
「しかしそれだけじゃないのだからな。精細なる会計報告が済むと、今度は翌日あす御菜おかずについて綿密な指揮を仰ぐのだから弱る」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう宗さんのように坊さんみたようなこと言ったって……何も交際つきあいの道具ですもの……もともと有って始めた事業じゃないんですもの……贅沢だ、贅沢だと言う人から、すこし考えてくれなくちゃ——こんな御菜おかずじゃ食われないの、何のッて」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御常はまた飯櫃おはち御菜おかず這入はいっている戸棚に、いつでも錠をろした。たまに実家の父が訪ねて来ると、きっと蕎麦そばを取り寄せて食わせた。その時は彼女も健三も同じものを食った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
膳の上を見ると、ぜにのない癖に二三品御菜おかずをならべている。そのうちにさかなの焼いたのが一ぴきある。これは何と称する肴か知らんが、何でも昨日きのうあたり御台場おだいば近辺でやられたに相違ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ほんとに曾呂崎の焚いた飯はげくさくってしんがあって僕も弱った。御負けに御菜おかずに必ず豆腐をなまで食わせるんだから、冷たくて食われやせん」と鈴木君も十年前の不平を記憶の底からび起す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)