後髪うしろがみ)” の例文
しかしいざこうときめてしまってみると、たちきれぬ未練みれんがむくむくと頭をもたげてまいりまして、わたしの後髪うしろがみを力づよくひくのでありました。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
いまだ左程に疲れもやらぬ正午下ひるさがりの頃ほひより足の運び俄かに重くなりて、後髪うしろがみ引かるゝ心地しつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お島はとぼとぼと構内を出て来たが、やっぱり後髪うしろがみひかるるような未練が残っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
而もなほありあまる愛着と未練と淫情と臆病とに後髪うしろがみを絶えず曳かれつつ蹌踉として進むに進めぬみじめさ。苦しみ抜いた、私は全く苦しみ抜いた。さうして漸く今在る処まで行き着いた。
而もなほありあまる愛着と未練と淫情と臆病とに後髪うしろがみを絶えず曳かれつつ蹌踉として進むに進めぬみじめさ。苦しみ抜いた、私は全く苦しみ抜いた。さうして漸く今在る処まで行き着いた。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
思ひまるべくもあらずとて、人々のいさむるを聞かず、叔母と乳母とに小児を托して引かるゝ後髪うしろがみ切払きりはらひ、書生と下女とに送られて新橋しんばしに至り、発車を待つ間にも如何いかになし居るやらんと
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
その芳野へお移りになって外国航海と相成りしに後髪うしろがみをひかれる気はいたすものゝ、堂々たる軍人にして一婦人いっぷじんの為にひじをひかるゝは同僚の手前も面目なしとあって、綺麗に別盃べっぱいをお汲みなされ
なんだか後髪うしろがみをひかれる思いで帰って来た。
境は後髪うしろがみを取って引かれた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)