彼岸過迄ひがんすぎまで)” の例文
彼岸過迄ひがんすぎまで」というのは元日から始めて、彼岸過まで書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実はむなしい標題みだしである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの長い刀をかけた、——いや、かういふ昔の景色は先師夏目なつめ先生の「彼岸過迄ひがんすぎまで」に書いてある以上、今更僕の悪文などは待たずともいのに違ひない。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが午過ひるすぎになってまただんだん険悪におちいったあげく、とうとう絶望の状態まで進んで来た時は、余が毎日の日課として筆をりつつある「彼岸過迄ひがんすぎまで」をようやく書き上げたと同じ刻限である。
三山居士 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでペリカンの方でもなかば余に愛想あいそを尽かし、余の方でも半ばペリカンを見限みかぎって、此正月「彼岸過迄ひがんすぎまで」を筆するときは又と時代退歩して、ペンとそうしてペンじくの旧弊な昔に逆戻りをした。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)